大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)3603号 判決

被告人 五十嵐保 外

〔抄 録〕

右弁護人Aの控訴の趣意第一点の(一)、弁護人Bの控訴の趣意第一点乃至第三点及び弁護人Cの控訴の趣意第一、二点及び第四点について。

論旨は、いずれも原判示第一の一乃至四の事実につき原審の事実誤認乃至審理不尽、理由そごを主張するものであるが、原判決挙示の証拠を綜合すれば原判決認定の事実殊に被告人両名共謀の上判示組合の組合員から農業資材購入資金借入の申込があつたのを奇貨とし、真実組合員に対し農業手形の割引によつて融資を受けた資金を貸与する意思もなく、しかも農業手形制度所定の各組合員の借用証書の大部分をほしいままに作成した上組合名義の原判示農業手形四通を振り出し、これを原判示千葉県信用農業協同組合連合会印旛支所(以下信連印旛支所と略称する。)に呈示して原判示のごとく同所係員を欺罔して右手形の割引により原判示金員の交付を受けてこれを騙取した事実を認めることができ、被告人らに本件詐欺の犯意がないものとなすことはできない。記録を精査検討し、当審における証拠調の結果に徴しても原判決に事実誤認乃至審理不尽若しくは理由そごの違法は存しない。弁護人は本件については詐欺の相手方たる信連印旛支所係員を欺罔した事実もなく、殊に本件金員の使途については信連印旛支所の知悉しているところである。と主張するけれども、当審における証拠調の結果、殊に証人唐鎌隆次の供述によれば、本件金員の使途のごときは農業手形の割引によつて融資を受けた金員が信連印旛支所の当座預金口座に振り込まれた場合に限り組合振出の小切手が廻つて来て始めて判明するものであり、またあらかじめ組合が組合員に対して組合手持の金員をもつて農業資材購入資金を貸与した場合にはその分については後の農業手形割引による金員を他に流用するも、これは組合自体の資金繰りによるものであつて信連印旛支所としては何ら関知するところではないものというべきであるのみならず、本件被告人らのごとく、真実組合員に対し農業手形の割引によつて融資を受けた資金を貸与する意思もなく、また農業手形制度所定の各組合員の借用証書が単に形式的のものであつて、真実に添わない場合には信連印旛支所としては農業手形による貸出をなさざるべきことは極めて明らかなところであるから本件の場合においては到底詐欺罪の成立を免れないものといわなければならない。畢竟論旨は、いずれも理由がない。

註 本件破棄は量刑不当。

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